



先日、横浜市が運営する「横浜移住サイト」の取材を受けました。
インタビュアーとして来てくださったのがなんと芥川賞作家の荻野アンナさんでした。
未だ荻野さんの著書を読んだことがなかった私は芥川賞受賞作である「背負い水」を予め購入して読んでから荻野さんをお迎えすることにしました。
考えてみれば昨今の私はビジネス書をはじめ実用書の類ばかり読み、生粋の小説というものをあまり読まなくなっていたことに気づかされました。
個人的な好みの小説は何故か女性作家のものが多いという自覚があります。
山田詠美、湊かなえ、辻村深月といった好みの作家の共通項をあまり見いだせないでいるのですが好きになった作家が結果的に女性であることが多いのです。
今回荻野アンナさんの小説を読んでみてそれはやはり私の好みのド真ん中の文体でした。
そう、文体であるとか描写、表現方法が好みのド真ん中なんです。
例えば主人公が男性とオペラを観に行来た時、席に座っている際の描写を引用します→
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「気が付くと腕が熱い。私の左側に裕さんが座っている。椅子の肘掛けを境にして裕さんの右腕と私の左腕が並ぶ恰好になっている。並んだ腕と腕がいつのまにかくっつきそうに接近していた。くっついているのではない。くっつく寸前、紙一枚の隙間を残している。それでも彼の腕の温かみが確かなものとして私の上腕部に伝わってくる。身動きがとれなくなった。一ミリでも体を動かせばそれが意思表示になりかねない。汗が滲んできた。唾が溜まってきた。唾は普通意識して出すものではない。それとなく口中を潤して、いつとはなしに消えている。それがいったん気になりだすと盛んに自己主張を始めるのだった。後から後から湧いてくる。あっという間に舌の裏に小さな湖ができる。水かさが増えるにつれ喉の筋肉が引きつってくる。もはやこれまで、床上浸水寸前のところで文字通り固唾を飲む。音がする。音がするような気がする。音に隣の人が気付いた気配がするような気がする(「背負い水」P14より)」
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昨今の売れる小説やマンガ等はとにかくストーリーやキャラにインパクトが過重にあり、壮大なスケールや大どんでん返しなど、とにかく読者を飽きさせない設定のものが多い中、荻野さんの作品の舞台は一切の奇をてらうでもない日常であり市井の人。
それでいてそこにある人間模様や情景描写は読んでいてスーっと沁み込んでくる。
そこに上記のように畳みかけるような表現が美しくそれでいて一筆書きのような滑らかさもあり読後にしっかりと切なさも残す・・・。ああこれですよこれこれ、こういう体験が小説の真骨頂なんですよ!
そういった読後感想をご本人に伝えたくてしょうがないのに現実として起こっていることは荻野さんが私に色々と訊いてきて細目にメモしてるという構図がなんだかもどかしかったです。
※写真は荻野アンナさんと
※そのインタビュー記事の掲載はおそらく今月末か来月初旬になると思われるのでその情報はわかり次第また告知いたします。
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