かつて甲本ヒロト氏が「音楽をやることが夢なのであればそれでお金が稼げるとか有名になるとかはもう関係なくて音楽を今やれているのであればそれだけで夢はもう叶っているんだよ」というようなことを言っていました。至極名言です。
これを踏まえると1980年に初めて自作曲を作り人前で演奏し始めてから44年間一度も途切れることなく現役で音楽をやり続けている私の夢はず~っと叶いっぱなしです。
ただここでもう少しだけ解像度を上げて音楽への向き合い方、どういう状態の時が無上の喜びなのかという話をしますと、まずは楽曲を作ってる時、そして出来上がった時、つまりはクリエイターモードの時はとにかく心が大充実しています。
では出来上がった後は?人前でそれを表現、発表する、つまりライブは喜びの極みです。
しかしそのライブの中で私が「本当のところでは満たされていない状態」というのがありまして、それはどんなライブなのかといいますと・・・
① お客さんは全て身内や友人知人
② ライブの出演者=お客さん(オープンマイクと呼ばれるものなど)の状態
こういった状態のライブは私の場合真に心が満たされることはありません。
「学芸会や発表会」なんかは①で、「カラオケ」なんか②ともいえますね。
そうした①や②はまぁもちろん楽しいっちゃ楽しいのですが、それで満足しているのであればそれは「音楽=趣味」という域を出ないわけで、そんな気持ちであれば大学卒業して就職せずフリーターをするなんてこともありませんでしたし(時はバブル絶頂期ゆえ望めばほぼ100%就職は出来た時世の話です)、日々研鑽なんかもしていないと思います(私の場合は)。
ではどういう時が最高に満たされるのかといいますと、ズバリ「友人知人でもない一般不特定の人の前で演奏し、しかもそういう人たちに支持されるライブ」であります。
そういう環境下に身を置きたいがためにプロを目指し続けていたといっても過言ではありません(甲本ヒロト氏もおそらくここの最低限の部分がクリアされてる環境は望んでいるのだと思います)。
さて、今述べた私のライブの理想像、つまりお客さんが友人知人ではなく、一般不特定の人の前でやりたい、というこのライブをそっくりお店の営業とし、ライブのお客さんがお店のお客さんというように当てはめてみます。
「来店客は友人知人ではない不特定多数の人ということを大前提に営業をする」という意識で運営していると「カウンターにいるのは常連さんばっかりで世間話に花が咲き、カウンターに新規のお客さんはあまり座らない」というお店にはなり得ません。
ある意味スナックやバーではそれもいいのかもしれませんが、カフェのような業態ではとにかく「全年齢、性別、所得層、国籍、そして全時間帯」全てが対象となるものであり、またそうでなければこの商売を続けていくことは難しいと思っています。
17年経っても未だに新規のお客さんが日々訪れる当店は良い意味で凜とした緊張感があり、おかげで私自身もピシっと引き締まり日々の運営をすることが出来ます。
毎月の弾き語りも「友人知人でもなくミュージシャンでもない普通の人」の前でこれまで199回(今月で200回!)も続けてこられたことは音楽人としても大きく成長出来たと思いますし、夢に描いた理想の人生未だ継続中!ともいえます。
今年もこれからもどうぞよろしくお願いします。
珈琲文明店主 赤澤 智 はなしがいレコード代表あかざわ さとる(おじゃ丸)