お子様の夏休みの読書感想文の本としても、また大人の皆さんにも大変お勧めの一冊をご紹介します。この「駅伝ランナー」の著者佐藤いつ子氏、実は私の中学(兵庫県西宮市)の同級生でして、現在は関東に住むこの中学出身連中で集まる関東支部の参謀(?)を私と共に務めてくれたりもしています。この「駅伝ランナー」は重版ヒットしただけでなくなんと高校入試の試験問題にもなっており、教育的にも非常に評判が良い小説です。 で、私はそういった(教育的に良い)話なんだという予備知識だけ持ち読み始めました。
優れた小説(歌詞にしてもそう)は風景や情景がクッキリと脳内に浮かぶものであるという自論を持つ者としてこの話は疑いなく優れた小説だったし、このままいわゆる「教科書的なイイ話」を読んで童心に帰るのも悪くないなぁと思いながら読み進めました。
そんな中、「小鳥の憧憬」という章に入って、しばし読み進めると「おおおおぉぉぉ!」ってなりました(語彙力・・・)。
私のように何も知らされずに「おおおおぉぉぉ!」ってなりたい人はここから先は読まずにとにかく角川文庫から出ているこの「駅伝ランナー」を今すぐ購入し読破してください。
さて、以下は多少ネタバレも含みます。どう「おおおおぉぉぉ!」なのかといいますと、突然主人公が変わったんです。「同時世別角度視点描写(て、こんなフレーズじゃなくきっともっとちゃんとした呼び名があるとは思うけど)」が起こってるんです。
女流作家の中で私が好きな山田詠美さんや湊かなえさん、辻村深月さんなんかもこの手法を使った名作がありますが、この「『駅伝ランナー』からの『小鳥の憧憬』」もそれがあまりにも見事で唸りました。
さらに中盤からこれまた強烈なキャラが登場します。少年漫画に必須な、人気投票すると主役を喰うほどのキャラ(スラムダンクでいえば流川、魁男塾でいえば伊達)が登場して全く飽きない。
とにかくこの「駅伝ランナー」には主人公が3人いると言っても過言ではないんです。
この話は実写にも合うような気がしてて、その際にこの「一心(←流川や伊達ポジションの人物)」にはイケメン俳優起用して大ヒット!とか勝手に妄想は膨らみ映画化を熱望します。
一心が陥ったトラブルのくだりでもっとダーク&ダーティ&陰湿な展開もあり得たかもしれないけどそこはさすが「教科書的」なのでお子様にも安心してお勧めできます。
過不足ない、いや清々しいほどにポジティブ&アッパーな余韻を残してのラストを読み終えた爽快感はこの夏あなたも間違いなく爽快な気分にさせてくれるでしょう。
「駅伝ランナー(佐藤いつ子著)①~③」角川文庫ぜひご一読ください。