とある日曜営業、外は土砂降りの日のことでした。
会計を済ませた学生とおぼしき男性が帰りがけにしばらく傘立ての前で立ち尽くし、その後傘を持たずに店を出ました。彼の傘を誰かが間違えて持って帰ってしまったと思われ、似たような傘が残されていたら「じゃ僕はこっちを持って帰ろう」とはならずに彼は何も持たずに店を出ました。外はかなり雨が降っているというのに・・・。
正直者が馬鹿を見る世の中にしてはいけない!ここで彼が濡れていいわけがない!と全自分脳内がシャウトし(ピークタイム絶賛オーダー差し込まれ中でしたが)彼を追いかけ「ちょっと待ってください、私の傘でよかったらこれ差し上げますんでどうぞ、傘が無くなってたんですよね?でも代わりに似た傘を持っていくんじゃなく店を出たあなたは凄いです(拍手のジェスチャー付きで)と言ったら彼は照れたように微笑していました(※閉店後に残った1本はさぞかし何の変哲もないビニール傘だろうと思っていたら上半分が透明で下半分が黒の個性抜群のビニール傘でした。なぜ間違えたんだろう・・・)。
「されたからされ返す」「悪しき慣習を踏襲する」「虐待の連鎖」「負の歴史を繰り返す」といった流れに歯止めをかける行為、負の連鎖を断ち切る行為は大袈裟なくらいに賞賛されていい。
この彼のような若者が増えたら戦争も起こらないのではないかとさえ思う、そんなとある日曜営業、外は土砂降りの日のことでした。
珈琲文明 店主 赤澤 智