営業職の人や芸能人などを外に出て働く「狩猟民族タイプ」とするならば、カフェの仕事は定住しながらの営みになるので「農耕民族タイプ」です。私の前職である学習塾というのも教室を水田とする農耕タイプでした。飲食店であってもチラシやクーポンを配りに出たりする「狩猟」が必要なこともあるかもしれませんが私はやったことがありません。学習塾時代はチラシのポスティングを(本部からの命令でもなんでもなく自主的に)やったことがありましたが、これの本当の真意は見知らぬ町(山梨の教室に赴任していたので)の地域の特性、例えばどこにどんな学校があって娯楽施設があって他塾があって等はもとより、単に町の空気を体感したいというつもりでサイクリング気分で自転車でまわっていたので仕事という感覚は希薄でした。そんな中でひとつ「狩猟民族系業務」と呼べるものが山梨エリアマネージャーとしての仕事でした。それは山梨にある他の全ての教室の新人講師たちに向けた研修会(4時間くらいぶっ通しで喋ります)や他の教室長との合同会議や東京本部との往復等、本来の教室長としての基本業務である「自分の教室の生徒と講師を管理」する以外の外部活動的なものが組み込まれておりました。珈琲文明はチェーン店でもなんでもなく一つしかありませんのでこのエリアマネージャー的業務というのはありませんが、近年たとえば「コーヒー講座」であるとか「カフェ開業講座」のようなものを依頼されどこかに出向くという「狩猟タイプ」の業務も増えてきまして、これは自分自身やっていて本当に楽しくやりがいもあるものなので今年もこういうことはどんどん出向いてやっていきたいと思っています。また飲食店主(特に個人店)というのは頭が凝り固まり、進化しようとしないゆえに退化の一途をたどるタイプが多いので「現状維持は退化」を肝に銘じ、他の「田んぼ」も見学しにどんどん出向こうと思います。この「田んぼ」は同業態の店よりもむしろカフェ以外のお店のほうが個人的には参考になると考えております。珈琲文明は創業から今年で干支が一回りします。日々の最重要業務である店舗運営が第一で「農耕民族的業務」が大原則なのはこれからも変わりませんが、今年はそんな農耕民族が行ける範囲やれる範囲で楽しみながら「外出、散歩」に出ようと思います。
珈琲文明 店主 赤澤 智